成形に使用する材料
プラスチック射出成形に使用される材料には ①熱可塑性樹脂と②熱硬化性樹脂の2種類があります。
①熱可塑性樹脂 加熱すると溶融軟化(この性質を可塑化という)し、冷やすと固まる性質を有する。※何度も溶かして固められる
②熱硬化性樹脂 重合または、縮合という化学反応を伴って硬化した後は、再び熱を加えても、溶融も硬化もできない性質を有する。
主な熱可塑性樹脂の種類と性質
樹脂名 | 性質 | 用途 |
ABS樹脂 | 電気的性質、成形性が良いスチレンにアクリルニトリルを加え、耐薬品性、耐熱性を向上。ブタジエンを加え、耐衝撃性を向上している。また、寸法安定性に優れている。 | 家電製品のキャビネット、自動車、事務機器、玩具、スポーツ用品など |
AS樹脂 | ポリスチレンと同様透明性が良い、スチレンにアクリルニトリルを加えて、耐熱性、耐薬品性、機械的性質を向上している。 | 容器、日用雑貨、文房具など |
PA(ポリアミド) | 摩擦係数が低く、自己潤滑性、耐摩耗性、耐薬品性、耐衝撃性に優れる。硬度が高く温度変化の影響を受けない。吸湿性が高く、寸法安定性が良くない。 | ギヤ、ベアリング、ブッシュ、カムなどの機械部品。電気部品など |
PBT | (ポリブチレンテレフタレート)。成形性が良く、PETと比較して耐衝撃性に優れるが、機械強度、耐熱性には劣る。 | 電気部品、コネクタなど |
PC(ポリカーボネート) | 剛性が高く、耐衝撃性、引っ張り強さが高い。成形収縮率が小さい為、寸法安定性に優れる。熱変形温度が高いが、四塩化炭素に対して耐溶剤性に低く、ストレスクラッキングを起こしやすい。 | 風防や、レンズ、電気部品、ギヤなど |
PE(ポリエチレン) | 熱安定性に優れ、成形性が良い。耐薬品性、耐寒性、耐衝撃性に優れる。 |
キャップ、中栓から、大型のコンテナーまで広く使用される。 |
PET | (ポリエチレンテレフタレート)。ペットボトルに使われているのがその名の通りPETである。耐摩耗性、耐薬品性、耐水性に優れ、熱膨張性が低く強靭である。 | 文房具、PETボトルに付いている持ち手もPET製である。その他、ブローボトル、繊維で広く使われる。 |
PMMA(アクリル) | メタクリル樹脂とも呼ばれる。表面光沢が良く、変色しにくい。機械的性質、耐薬品性、耐油性に優れている。 | レンズ(光学系、自動車ランプカバー他) |
POM(ポリアセタール) | 一般にジュラコンと呼ばれているのは製品名である。耐摩耗性に優れる。ナイロンと近い性質を持つが、耐水性、寸法精度はナイロンに勝り、耐摩耗性はナイロンより劣る。燃えやすい欠点がある。 | ギヤ、自動車部品、電気部品など |
PP(ポリプロピレン) | 耐熱性、耐候性、耐衝撃性、ヒンジ特製が良い。低温で耐衝撃性が低い。成形上は配向性が強い為、反りや変形を起こし易い。 | キャップ(特にヒンジキャップ)、日用雑貨など |
PPO(変性PPO) | または、変性PPE。機械特性、成形性、耐水性、電気特性に優れる、PCと比べると耐衝撃性ではかなり劣る。 | コネクターなどの電気部品、医療機器など |
PPS | (ポリフェニレンサルファイド)。耐熱性が非常に高く、200℃の条件下でも連続使用に耐えられる。耐薬品性、難燃性、機械的特性に優れる。 | 電気部品、自動車部品、ファンなど |
PS(ポリスチレン) | 成形性が良く、透明性に優れている、電気的性質(絶縁性、高周波特性)、機械的性質に優れいている。耐衝撃性に弱く、割れ易い。割れ強度を増すために、ゴムを加えるとハイインパクトスチロールになる。 | 容器、日用雑貨、文房具、発泡してクーラーなど、断熱材に使用 |
PVC(ポリ塩化ビニル) | 塩ビと呼ばれ、一般に広く使われている。耐候性、耐薬品性が良い。自己消火性がある。 | 水道配管や継手(硬質塩ビ)などから、日用品一般 |